先日、アラン・デュカス(Alain Ducasse)のドキュメンタリー映画、「宮廷のレストラン」を観た。アラン・デュカス氏は、今年亡くなったジョエル・ロビュション(Joel Robuchon)と並ぶ世界最高峰のフランス料理のシェフ。世界中に星付きのレストランを有す。彼がヴェルサイユ宮殿内に新しいレストランを開店する過程が映画化された。
私は、アラン・デュカス氏の行動の様々な側面い感動し、感激し、元氣をもらった。
1 まず、彼は、徹底的に素材にこだわる。それも、自然を大切にする。「自然な美食」(la gastronomie de la naturalite)を追求し、自ら畑に出て、その場で野菜でも何でもかじる。
2 世界中、地球の果てまで行って探求する。映画では、日本に始まり、米国、ロンドン、中国、モンゴル、フィリピン、ブラジルと渡り歩くDucasse氏の姿があった。中国では、イランの技術を取り入れたキャビア養殖場を訪ね、ブラジルでは、チョコレートの素ととなるカカオの森林に入る。徹底した現場主義である。
3 人を大切にする。各地で、かつての教え子、弟子たちと会う。アメリカ人も、イタリア人も、フィリピン人も、皆、彼を尊敬し、彼に感謝する。フィリピンでは、スラムにも行く。料理人育成学校では、毎年、恵まれない若い人達に奨学金を出している。そして、全員、一定期間、パリで研修させる。メセナ(CSR)の一環かもしれないが、若い人達と肩を並べるグランド・シェフには愛情が感じられた。
4 妥協をしない。どこの国に行っても、どのレストランに行っても、すぐ厨房に入り、味見をして、チェックを欠かさない。各レストランのショフは、デュカス氏が現れると緊張している。気を抜けない。でも、真剣勝負。褒められると嬉しい。
5 アランは日本がお好き。毎年、4-5回来日すると言う。自分のレストランに寄るのはもちろん、日本食の小さなお店も訪れる。京都も好きだ。カウンターで気さくに食事をする。卵丼に山椒をかけたり、吟味した材料(なまこ?)を見ながら天ぷらを食したり……。カウンター越しに、日本人の料理人と会話を楽しむ。
6 アラン・デュカス氏は、レストランで一般客に美食をふるまうだけでなく、VIPや大きなパーティで外交を支える。オランド大統領の時には、気候変動の国際会議COPが開催されるのを聞き、いかに食事を倹約してリサイクルして提供できるかを会議の晩餐会で試したいと提案する。実現はしなかったが、ヴェルサイユ宮殿での晩餐会では、各国大使を相手に、自らも外交をする。
ビジネスでも外交でも、空腹で交渉するものではないと言う。人間、空腹では不機嫌、やはり美味しい物を食べたり、美しい物を見たりすれば、誰しも幸せ気分である。
外交にとって、食文化は非常に重要な要素。だからこそ、気も遣うが、フランス人や日本人は、口にうるさいだけに、美食外交は得意とするところだろう。
美食は、外交の1つの武器である。
外務省のサイトに面白いページを見つけた。「公邸料理人」、外交を蔭から支える縁の下の力持ちである。Japan is Delicious! 「日本は美味しい!」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/a
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