2018年10月3日水曜日

宇宙外交について







2018年9月19日、東京大学の安田講堂に、日仏国交160周年を記念して開催された公開シンポジウム「共同宇宙探査宇宙飛行士の視点」を聞きに行った。
 フランスからは、トマ・ペスケ宇宙飛行士が参加した。ペスケ飛行士は、197日間(201611月~20176月)ISS(国際宇宙ステーション)に滞在した。
 同期で、同様にISSに滞在した日本人として、金井宣茂宇宙飛行士が話に加わった。彼はISSに168日(201712月~20186月)滞在し、今年、地球に帰還したばかりだ。地球に帰還してからは、身体の平衡感覚を取り戻す、すなわち地球の環境に適応するためのリハビリに励んだと言う。
 日仏2人の対談の司会役を大西卓哉宇宙飛行士がされた。彼らは、2009年に宇宙飛行士に選出された同期ということだ。


現在まで、日本の宇宙飛行士は11人、フランスの宇宙飛行士は10人いる。これは世界的には多い方である。三桁の宇宙飛行士を輩出しているのはアメリカ)(300人以上)とロシア(100人以上)のみである。
詳しくは、fanfun.jaxa.jp/faq/detail/173.htmlにある。それによると、日本は、米露についで宇宙飛行士を輩出している国となる。



これまでに宇宙に行った人※1は、556人※2で、国別に表したものを以下に示します。
※1:宇宙へ行った人とは、高度100kmを越えたことを意味し、弾道飛行を含みます。
※2:同一の人物が2回以上飛行した場合は重複して数えていません。 また、宇宙旅行者を含みます。
これまでに宇宙に行った人の数(2018年6月7日現在)

国名
男性女性合計
アメリカ29547342
ロシア(旧ソ連)1174121
日本10212
ドイツ11011
フランス9110
中国8210
カナダ729
イタリア617
ブルガリア202
オランダ202
ベルギー202
イギリス112
ハンガリー202
カザフスタン101
インド101
スペイン101
スイス101
オーストリア101
ウクライナ101
チェコ101
ポーランド101
ルーマニア101
スロバキア101
ベトナム101
モンゴル101
メキシコ101
キューバ101
サウジアラビア101
シリア101
アフガニスタン101
南アフリカ101
イスラエル101
ブラジル101
スウェーデン101
マレーシア101
韓国011
デンマーク101
合計49561556
延べ人数※31,258
※3:「延べ人数」は、同一の人物が複数回飛行した場合もそれぞれ1人として数え合計した人数です。1人で4回飛行した場合は延べ人数は4人になります。
【出典】NASDA NOTE
NASA Human Space Flight ~History
 宇宙飛行士達のお話を聞き、本当に、宇宙飛行士達は、並大抵に人々ではないと、尊敬の念を大きくした。精神力、体力、気力、人格そして国際性と、それらを兼ね備えた人々である。もちろん、努力家で、優秀で、決して諦めない心を有し、情熱的でありながら、冷静沈着である。
 日本人のフランス人も、英語はもちろんだが、ISSに乗り込むのに、ロシア語も徹底的に勉強する。ISS内では、様々な実験をする。大変忙しい毎日である。
 初日から数日間は慣れずに天井に頭をぶつけるなどするが、とにかく最初の興奮は、「夢の中の夢にいるようだった。」とペスケ宇宙飛行士は述べた。

  金井宇宙飛行士は、もともと防衛医科大学出身の自衛官の医師だった。お医者様ということもあって、健康長寿のヒントは宇宙にある。というテーマで、アルツハイマー型認知症や糖尿病の治療薬の実験も行った。
金井宇宙飛行士は、日本人4人目となる(土井、野口、星出各宇宙飛行士に次ぐ)船外活動を行った宇宙飛行士である。野口聡一宇宙飛行士は、来年、再びISSに飛び立つ予定だが、彼は、かつて自らの船外活動について、命を賭けて行ったことを述べた。宇宙服を着ていると言っても、船外は未知の世界。その宇宙空間で人間が生きていられる保証は何もない。ISSの扉を二つ開け閉めしながら、死への覚悟もあったと言う。
だからだろう。金井飛行士は、シンポジウムの中で、しきりに、「先輩、先人達がやってきたことに感謝し、それを引き継ぎ、更に発展させたい。」との言葉である。未知への世界へ飛び込んで行った先輩宇宙飛行士への賛辞である。

金井飛行士は、国連宇宙部との連携協力(KiboCUBE)第1として、ケニア、トルコ、コスタリカの超小型衛星の放出も行った。また、アジア諸国から募集した実験もしている。こうして、アジア・アフリカ諸国の宇宙開発や宇宙への参画にも貢献している。


通信面では、ISSから2回国際宇宙探査フォーラムに参加したり日露首脳会談で交信したりもした。まさに、「宇宙外交」が、日露、日米、日仏等、また多国間でも繰り広げられているのである。

安全保障面では、サイバーや宇宙空間での防衛が課題になっているが、宇宙飛行士達が行っている「宇宙外交」は、国際協力の場であり、平和の萌芽である。

宇宙が、対立から協調、協力への場となるなることを願って止まない。


宇宙に関わる国際チームには、米国人、ロシア人、日本人、ドイツ人、フランス人、カナダ人、イタリア人、英国人等が加わっている。こうして見ると、G7(ロシアを入れるとG8)諸国である。


「一流国家」とは何か、を考える時、それは(国際的に)一流の人をどれだけ輩出できるかではないだろうかと、素晴らしい宇宙飛行士の方々のお話を聞きながら思った。


ISS内では、生物、化学、物理、医療等の分野の実験が多くなされる。今年も、ノーベル生物学・医学賞に、京都大学の本庶特別教授が選出された。日本人として、とても喜ばしく思った。


宇宙でも、これら科学の基礎研究でも、未知の世界での発見を通じて、「人類」に貢献しよとする人々の誠意や熱意が感じ取れる。

大きなミッション(使命)を果たし成功させた宇宙飛行士達に「おめでとう」を言いたい。そして、「有難う。さらに、これからも「御気を付けて、宇宙の旅へ。」。

Bon Voyage!

月の明るい秋の夜長に。

*下記は、9月24日に放送された番組。上記した宇宙外交のお話をしました。

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