2019年2月23日土曜日

東西文化の融合、能「伽羅沙」

 2019年2月21日、国立能楽堂で、能「伽羅沙」を鑑賞した。日仏交流160周年の記念として、ピック駐日フランス大使が神父役で登場され、能舞台の上で、フランス語が朗読された。とても不思議な感じがした。
 明智光秀の娘、細川玉の洗礼名が「ガラシャ」。ローマ字ではGracia、すなわち神の恩恵、それへの感謝の念をも意味する。山本東次郎師が脚本をした新作能で、1997年にサントリーホールで初演されたそうだ。
 昨日の能楽鑑賞は、私にとって、能そのものというよりも、色々な人との繋がりや、東西の文化の融合を感じる、またとない機会となった。そのことを二、三書き留めておきたい。

(1)「東西文化」の融合、大成功
 仕舞から始まる能舞台。舞台は純日本風家屋の形をした木の舞台。背景は松。袴姿の歌い手さんに笛や鼓。そこに、ラテン語(?)のミサ曲が流れる。暁星の中高生の男性合唱団が、観客席の後方から歌い始めた。二部・三部とはもる歌声が能楽堂に響く。
 それに合わせて舞うシテ梅若紀彰。見事だった。
 昨年の丁度今頃、2月17日、羽生結弦選手が「陰陽師」の曲でオリンピックの金メダルを掴んだ。その事を、彼は、西洋で始まったフィギュア・スケートという競技に、日本の雅楽の曲を合わせてみることは挑戦であったが、。それが世界的に認められたことが何より嬉しいと述べていた。
 今回の能は、その逆であった。西洋のミサ曲に能の舞を合わせてみた。厳かな空気の中に、ガラシャ自身が、武家の精神とキリシタン信仰を合わせもっていたように、白の能装束の揺れる姿と生徒達の合唱が、共鳴していた。

(2)明智光秀と細川珠生さん
 暁星の中高生の合唱を聴いた時、一人の友人を思い出していた。ご子息が暁星に通うと話していた細川珠生さん。そうしたら、何と、彼女と偶然会い、ご子息が合唱団で歌っていらしたとのこと。更に、驚いたのは、彼女が明智光秀の子孫にもあたり、洗礼名がGarciaと言うそうだ。細川ガラシャから取ったものなのか、偶然なのかは伺いそびれてしまった。そして、何と来年のNHK大河ドラマが「明智光秀」で、細川さんが本を書いたばかりだとのこと。早速購入させて頂いた。
私は昨年『オリンピックと日本人の心』(https://www.amazon.co.jp/dp/4905285895)
を上梓したら、今年の大河ドラマでは、私が書いた金栗四三選手が主人公になっていた。知らずに嬉しい驚きだった。

(3)ポール・クローデル大使の生誕150周年
 昨年2018年は日仏国交160周年でもあり、明治維新150周年であり、詩人・劇作家で駐日フランス大使もされたポール・クローデルの生誕150周年だった。2月21日の能を紹介したフランス大使館のツイートでも、その事が触れられていた。そのポール・クローデルの日仏文化交流への思いが形になった場所を、昨年夏、私は訪れた。「ヴィラ九条山」である。ヴィラ九条山は、京都にある施設で、そこではフランスのアーティストたちが数か月滞在して自分達の作品の制作に取りかかる。日本人とコラボすることもあるが、京都という環境にどっぷり浸っての文化活動である。フランス人のアーティストと会話したり、彼らの作品を見たりしながら、ここにも東西文化の融合の成功例を見つけた。





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